Oji’s 備忘録的 Diary

日々の読書からの備忘録です。

ウイルスとの戦い 5

今から約5000年前、肥沃な三日月地帯メソポタミア

都市国家が成立した。

ティグリス川とユーフラテス川に挟まれた地域を指し

この地に起こった文明の総称をメソポタミア文明という。

 

これは世界最古の文明に属すると考えられている。

 

この文明を作ったのはシュメール人と言われているが

その系統は明らかではない。

 

この地における疫病の様子が

19世紀にアッシリア遺跡から発見された

ギルガメッシュ叙事詩に記されている。

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大洪水より「まし」な四つの厄災の一つとして

疫病神の到来が挙げられている。

 

麻疹や天然痘といった急性感染症

定期的に襲ったことを示しているのかもしれない。

 

メソポタミア文明は急性感染症が定期的に流行するに足る

人口を有した初めての文明である。

 

性感染症を有する社会は

その流行によって一定程度の人口が恒常的に失われる。

 

しかし生き残った人は免疫を獲得し

それ以降の感染を免れる。

 

性感染症保有しない社会は

感染による日常的被害はないが

ひとたび感染してしまえば

保有する社会とは比較にならないほど大きな被害を被る。

 

性感染症を有する文明中心部に対し

持たない周辺部の集団が中心部を狙った場合

この生物学的障壁にぶち当たる。

 

新たな文明の担い手となるには

この障壁を乗り越える必要がある。

 

このことは歴史の中で繰り返し現れる。

 

極東に近いアジアでは紀元前600年頃から

黄河氾濫原で農業が飛躍的進歩を遂げた一方、

もう一本の大河である揚子江の流域の開発は

3世紀半ば頃となる。

 

この1000年の遅れの理由として

風土病の影響によるものと考えられるが

やがて揚子江周辺も

文明の影響下に置くことに成功する。

黄河文明が新たな感染症

レパートリーに加えたことを意味するのだ。

 

こうして疫病のレパートリーは豊かなものとなっていく。

 

インド亜大陸

ここに初めて文明が成立したのは紀元前3000年頃。

 

インダス文明と呼ばれ

大河の周辺に大小の都市国家が成立した。

 

紀元前1500年頃

中央アジアからアーリア人が侵入し

紀元前8世紀頃にはアーリア人による文明が

インド北西部に成立した。

 

高温多湿のガンジス川流域文明の感染症

インダス川流域文明の住民を圧倒した。

 

これによりカースト制度が生まれたという説があるが

やがて適応していき

ガンジス川流域の疫病レパートリーを自らの文明に加えた。