ウィルスとの戦い 4
生物には
それぞれ生きていくには不可欠な環境がある.
生物は生態系の中で
こうした環境をめぐり争奪競争を行っている。
こうした競争に生き残っていた地位を
生態学的地位(ニッチ)と呼ぶ。
新たな生態的地位の出現は
生物に適応放散のような進化的変化をもたらす。
目覚ましい適応放散の例として
約5億年前の先カンブリア時代に起きた
多細胞生物の出現が知られている。
似たようなことが
動物に起源を持つ病原体でも見られた。
人の感染症の種類は
野生動物の家畜化によって一気に増加した。
マラリア原虫も一例として当てはまる。
2000万年から4000万年前に急速に多様化したと思われる。
これは恐竜の絶滅、
約6500万年前に続く哺乳類の適応放散の時期に一致する。
哺乳類の爆発的増加が
マラリア原虫に新たな生態的地位を提供したのであろう。
農耕の開始は食料増加と定住をもたらし、
人口増加をもたらし、感染症の流行に格好の土壌を提供した。
野生動物の家畜化は
本来、野生動物を宿主としていた病原体が
人という新たな宿主を得て多様性を一気に増加させた。