分子の進化
生物の形態の進化は
「ゆっくりと斬新的に一定な速度」でではなく
断続的に起こっている。
分子レベルでも進化は起こっている。
形態レベルでも分子レベルでも
進化の主なメカニズムは自然選択、その結果、
進化の速度はどちらも一定ではないと考えられていた。
しかしどうも形態の進化と分子の進化速度は違っており
分子の進化速度はほぼ一定となっている。
日本の研究者K氏は次々に報告される分子レベルデータを検証し
2つの疑問点をもった。
一つは遺伝子の進化速度が速いこと、
もう一つは遺伝的多型(人間のABO式血液型のように複数の遺伝的特徴が
生物集団内に共存すること)。
これらが自然選択によって起きているはずがないと考えた。
分子レベルの進化が自然選択により起きているとすると
生物は
実際にはありえないほど多くの子どもを産まなくては
ならなくなるからだ。
自然選択は古いものを保存するように働くことが多い。
であるから進化を遅くする方向に働く。
遺伝子やタンパク質の進化の大部分が自然選択ではなく
中立な突然変異が偶然に集団全体に広がったと考えた。
分子進化の中立説に関する有名な方程式がある。
k = v
(k は一世代あたりの突然変異の置換率、v は配偶子あたりの突然変異率)
これは
中立な変化において進化速度は突然変異率に等しい、
ということを示す。
さて
人間とニホンザルには共通の祖先がいた。
それは人間ともニホンザルとも違う生物である。
その共通祖先から分かれ、両者は進化の時を経てきた。
人間は、ニホンザルを経由して進化したわけではない。
共通祖先から分かれて進化するという過程は、
全ての生物に当てはまる。