恐竜のDNA
1990年になった時点で一番古いとされていたDNAは
1万3,000年前のナマケモノのものだった。
しかしこの年、
ナマケモノのものよりも1,000倍以上も古い2,000万年前の古代DNAが
植物のモクレンの化石から採取されたとの発表があった
(アイダホ州クラーキア化石床)。
モクレンの化石は
緑色のままで、その葉の葉緑体からDNAを特定した。
この化石床では
その他の植物の葉の化石も発掘、それも緑色のまま発見された。
その後
1992年には
琥珀の中の2,500万年前のシロアリの化石から、
そして
1994年には
8,000万年前の恐竜の化石から、
古代DNAが報告された。
琥珀は樹脂が固まったものなので
外部からの水の侵入がほとんどなく、理想的なミイラ製造所となっている。
だから
2,500万年前の理想の状態のシロアリの化石の核、
8,000万年前の恐竜のDNAはユタ州の炭鉱、
地上から610メートルの深さで発見された化石から採取。
DNAは酸化しやすいため、
この炭鉱の泥炭が化石を保存する環境としては最適と考えられた
(泥炭が酸素を遮断)。
しかし
恐竜のDNAの真理については追試待ち、というのが
多くの研究者の取った見解、
追加サンプルを採取しようとするも炭鉱が崩壊、
それは叶わなかった。
さて
後にこの恐竜のDNAの塩基配列を再検討した結果、
ヒトのものであることが判明した。
アミノ酸はL体とD体が存在する。
自然界ではL体とD体がほぼ同じく存在。
生物体では
生きている間はその体内はすべて
L体のタンパク質でできているが、
生物体が死ぬと、
L体の半分が時間をかけてD体へと変化、
自然界と同じ状態へとなっていく。
その変化のことをラセミ化(racemization)という。
このラセミ化を調査した結果、
D/L比が0.1を超えるとDNAは増幅できないことが
分かった。
クラーキア化石床の植物化石、
コハクの中の化石ともD/L比は0.1を超えていたので
追試験を行ってもDNAの増幅は行えなかった。
ということで両化石のDNAは、古代DNAではなかったのだ。
いずれも何千年も前の化石からDNAが報告されたが
結果的には違っていたわけで、
太古のDNA採取は難しい。
今後新たな展開があるのかもしれない。