昆虫の戦い

昆虫の戦いというと

クヌギの木などの樹液に集まったカブトムシやクワガタを思い浮かべるが

実際にはそれほど頻繁に戦いは起こっていないことが分かっている。


カブトムシの場合、

戦う前の角を合わせた段階で勝負が決まってしまうことが多いようだ。
クワガタでも

樹液に陣取っているオスのところに別のオスが来た場合でも

ほとんど戦いは生じない。
無駄な戦いはしないのである。

アリの戦いはどうか。
縄張りを持つということは、 無益な戦いを避ける重要な手段であるが

互いの縄張りが重なった場合には戦わざるを得ない。
公園などでたまに見かける風景がそれである。

 

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知的な戦いをするアリもいる。
北米の乾燥地帯に生息するミツツボアリである。
働きアリの中に蜜壺役をする者がおり、働きアリが集めた蜜を溜め込む。

巣の天井からぶら下がり、生ける貯蔵庫として働いているのだ。


このアリはシロアリが好物で

ほかのミツツボアリの巣の近くでシロアリを見つけた時は大挙して押し寄せ、

相手のミツツボアリの動きを制圧してしまう。

そしてその隙にシロアリをいただく。
その際暴力行為は行わないが、本格的な縄張り争いともなれば別である。

ミツツボアリには同種だけではなく、ほかにも競争相手が存在する。
小型の北米ルリアリだ。
彼らはミツツボアリの数分の1の大きさだが、腹部から化学物質を出し

ミツツボアリを巣の中に閉じ込めてしまう。
また

くびれアリ属の一種はミツツボアリの巣に小石を投げ込み

ミツツボアリをこれまた巣に閉じ込める。
このような投石行為はほかのアリにも見られる。

さてアリの中で攻撃であり特徴的なのは

マレーシアのバクダンオオアリ。
敵に会うと、防御物質を分泌する頭部にある袋を爆発させて

自爆して仲間を守る。

余談だが

日本ミツバチはスズメバチに襲われると集団でスズメバチを団子状に包囲、

筋肉を震わせ熱を発し、スズメバチ熱死させる。
スズメバチの少ないヨーロッパでは見られない行動である。

 

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アリ植物、アブラムシとアリ

「アリ植物」

植物は、アリにすみかを提供する代わりに

ほかの昆虫からの食害を防いでもらう。
このように、アリと共生する植物をアリ植物という。

東南アジアではトウダイグサ科オオバギ族の植物が有名である。
そのオオバギ族の大部分はシリアゲアリ族のアリと共生している。


アリは植物の茎の中を住まいとし、葉を食べる昆虫から植物を守る。
代わりに植物は、栄養体というアリ専用の餌を提供する。

 

アリは巣の中にカイガラムシを飼養していることが多く

カイガラムシの出す甘露も食料としている。

そのほか

アフリカのマメ科のアカシヤや南米の熱帯雨林に育つイラクサ科のケクロピア

という植物もアリに栄養体を与え、共生関係を結んでいる。

 

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「アブラムシとアリ」
アリはアブラムシの甘露を求め集まる。
甘露は糖分のほかアミノ酵素などの栄養分を含む。


アリは甘露を食料とする一方、アブラムシを捕食者から守る。
アリとアブラムシは共生関係にある。

カイガラムシとアリも共生関係にあり、その極端なものは

ミツバアリというアリとアリノタカラというカイガラムシ


アリは栄養分のほぼ全てをアリノタカラの甘露に依存している。
アリノタカラもミツバアリがいなければ餌も生活の場も得られない。
雌アリ(新女王) が巣を飛び立つ時には一頭のアリノタカラをくわえ

また新しい組織で共生関係を作るのだ。

 

昆虫の暮らしのことについて

昆虫の中には社会生活を送る者もいる。


ミツバチ、スズメバチ、 蟻、シロアリ、アブラムシ、

アザミウマモクの昆虫に、社会性があることが知られている。

 

昆虫の社会性の例は、ミツバチやスズメバチのように

卵を産む女王蜂がいてその下に卵を産まない働き蜂がいる場合。

このように

卵を産む階級と、産まずに働く階級が共に生活していることを

「真社会性」 という。

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一方、「亜社会性」という言葉もある。

これはさまざまな昆虫に見られ

真社会性のような階級性はないが、親が子供のために卵を守ったり

餌の供給を行ったりするのだ。


特に有名なのは モンシデムシ族 の甲虫。
シデムシは「埋葬虫」と呼ばれ、動物の死体を専門に食べる。

ネズミなどの小動物の死体があると

ニオイに引かれ飛来し、雌雄共同で地面の下に埋める。
次に、埋めた死体を綺麗な肉団子状に加工し

カビないように管理する。

そしてそこに卵を産み、生まれた幼虫にはその団子をかじって

口移しで給餌する。

 

ほか、餌を巣に運ぶツチカメムシ科のカメムシ

卵と幼虫を守るツノカメムシ科のカメムシ
卵を背中に背負う子負い虫、

子供に餌となる菌類を与えるキクイムシ科の甲虫など

さまざまな段階で亜社会性を見ることができる。

「生きるために狩りをする」
映画でも有名な軍隊アリは、 集団で狩りを行う。
軍隊アリとは

軍隊アリ亜科、 サスライアリ亜科、 ヒメサスライアリ亜科の

3つの分類群の蟻の総称。

 

ヒメサスライアリ亜科の蟻は他の蟻を襲う。
サスライアリや軍隊アリの仲間は絨毯攻撃を行う。
襲われた場所にいた生き物は逃げ場を失い、ひとたまりもない。

逆にこの攻撃を待っているものもおり、

逃げてきたものを襲うという共生者も多い。

 

蟻は肉食のものが多いが

穀物を食べる植物食のものや菌食のものもいる。

植物食で有名なのはクロナガアリ。
菌食はキノコシロアリ亜科のシロアリやハキリアリ族の蟻などがいる。

 

ハキリアリは自分の菌園で菌を育て、それを食べる。
農業を行うのである。

昆虫の機能と形

機能と形。


生物の行動や形態にはほとんど無駄がない。
無駄があるものは淘汰されていくからである。


一部を除き生物の形態には意味がある。
近頃は生物模倣という、

工業製品に生かすという事業が活発になっている。
ただし

昆虫の基本的な性質ともいえる飛翔、 泳ぎ 、跳躍は

人が再現するのは難しい。


ミイデラゴミムシは 摂氏100度のオナラをする。
「ブー」 という音とともに煙が出て

強力なニオイと茶色いシミを残す。

頭部にヒドロキノン過酸化水素を貯蔵する袋があり

腹部先端の小さな部屋に流し込み、 酵素と反応し爆発するのだ。


光を放つ昆虫。
光を放つ昆虫ではホタルが有名。
体内にあるルシフェリンと ルシフェラーゼという酵素が反応し

その時の化学エネルギーを光に変えて発光する。

他にも発光する昆虫は何種かおり、

ヒカリキノコバエの幼虫やヒカリコメツキという甲虫の仲間など。

 

彼らは光を放ち、捕食するのに使っている。

ヒカリコメツキは幼虫だけではなく成虫も光を放ち

その光は ホタルよりもずっと強い。
しかし成虫がなぜ光るかは不明である。

ツノゼミの仲間、

特に南米のツノゼミはずば抜けて多様性を有している。

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ツノはすべて「 前胸背板」 という部分の突起で、

1本伸びた突起の先がアンテナのように枝分かれしているもの、

突起が前方後方に伸び三日月のように湾曲したもの、

半円で薄い体でおかしな模様があるもの、

ツノが変形して蜂のようになっているもの、など。


それぞれになぜそうなったかは明確な答えがないが

捕食者に食べられにくい、

毒を持っている証、

ハチや蟻への擬態などが考えられる。
しかしなぜ

南米において、他の地域にはない多様化が進んだかは不明である。

旅をする昆虫もいる。
蝶の仲間には越冬のため生息地を変える者もいる。 

鳥類と違うのは

1つの個体が長距離を移動するのではなく

世代を繰り返しながら北上し最後の世代が南下して

越冬をすることだ。

時間の旅をするのがユスリカの仲間。

「アカムシ」と呼ばれる幼虫は

乾季で水がなくなると水分3%の状態で無代謝のまま休眠する。
休眠した幼虫に水を与えると復活する。
なんと、17年間休眠させた物が動き出した例がある。

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昆虫の巧みな暮らし

家に住むもの。


有名なものはミノムシ

ミノは住居でもあり、服でもある。

ほかにも水生昆虫の幼虫、 ハムシ科の甲虫( 自分の糞で家を作る) 、

ヤドカリのように家を背負う者もいる。

タテハチョウ科の蝶、 ハマキガ科のガの幼虫は

葉を綴って巣を作る。

餌を待ち伏せするもの。

「 アリジゴク」と呼ばれる巣を作る

ウスバカゲロウの幼虫、ハナアブというハエの幼虫は

砂地にすり鉢状の穴を掘り、餌を待ち伏せる。
アリジゴクの中ではその幼虫は糞をしない。
消化器の中に糞を溜めておいて、飢餓の際に栄養にする。

そして、さなぎから成虫になった時に

大きな糞をひねり出して空に飛び立つのだ。


タマオシコガネは草食哺乳類の糞のにおいを嗅ぎとり、

そこに飛来し、球状の糞玉を作って遠くへ運ぶ。
玉を転がすのはオスで、玉の上でメスと出会い、

協同で玉を地下に埋め、そこに卵を産む。
タマオシコガネの幼虫はその草食哺乳類の糞玉を食べて成長する。

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ほかにも糞を食べるコガネムシはたくさんおり「フンムシ」 と呼ばれる。
自然界では 重要な清掃者である。
彼らがいなければそこらじゅうが糞だらけとなってしまう。

狩りバチ の幼虫は巣で暮らす。
狩りバチは寄生バチから進化したもの。
アシナガバチスズメバチの巣は、植物の繊維を噛み砕いて

唾液で繋いだ和紙のようなものでできている。
幼虫には住み心地の良い空間となるのだ。


環境の変化から幼虫を守る必要があり、

その後、営巣習性が巣を協同で作る社会性へと

繋がっていったのであろう。

蟻塚。
有名なのはシロアリが作る蟻塚。

実はシロアリはアリではなく、ゴキブリの仲間である。
アリのなかでも

山アリの仲間は蟻塚を作る。
蟻塚の中は摂氏30度近くに保たれており、子育てに適した環境となっている。

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昆虫の生殖活動

昆虫の生殖活動は様々である。

蛙のような水生生物は体外受精でもって

その場で相手に精子を受精させることができる。

一方、交尾により体内受精をさせる生物では

配偶相手のメスが別のオスと交尾をする可能性が常につきまとう。
防ぐ手段としては、交尾の後に

雌の生殖器にフタをしてしまう種がいる。

しかし、そのフタを脚力で外すものや

フタをするのではなく永遠に繋がり続けているものもある。

 

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昆虫のメスはオスから受け取った精包を体内の袋に保存、

産卵の時にその袋から精子を出して受精させるものが多い。


トンボの仲間では、先に交尾をしたオスの精包を奥に追いやり

自身の精包を一番手前にする。

変わった 交尾の方法としては

トコジラミの仲間はメスの腹部の適当なところに陰茎を刺し

精子を送り込む。

精子は血液を通じて卵巣にあたる部分にたどり着き受精するのだ。


そのほか

オスがオスの腹部に陰茎を差し込み精子を放出するもの、

メスに陰茎状のものがあり

オスの膣状となった交尾器に挿入、精包を吸い取るものもいる。

もっと不思議なのは クローン増殖するものがいることだ。
アブラムシ科の仲間の場合

自身と同じ遺伝子を持つクローンを産む。


そのクローンはすでに子を宿しており、爆発的に増える。
秋になるとオスが生まれその時だけ、交尾をした卵を残す。

寄生バチには「多胚性寄生バチ」というものがおり

その卵は分裂を繰り返し、増えていく。

寄生バチは常に他の寄生バチとの競争にさらされており

同じガの幼虫に別の蜂が産卵した時に殺し合いの様相を呈する。

 

苦労の何割かは早熟幼虫として別の蜂の幼虫を攻撃する役割を持つ。
しかもその幼虫は成虫にならずに死ぬ。

一つの卵から分裂したものが別の役割を持つということ だ。

極めて神秘的かつ驚異的である。

他にも子孫を残す活動は様々あるが、解明されていないところも多い。

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昆虫の色、昆虫の恋

昆虫の色、生物の色彩の意味については

ほとんど何もわかっていない。

人から見てきらびやかな生物も、自然の中で見ると目立たなかったりする。

 

タマムシの中には臭いニオイを出すものもいる。

ニオイを出す者の体の鮮やかな色は、臭いぞという警告であったりもする。

 

人には鮮やかに見える昆虫も

動物にしろ昆虫にしろ、人と同じように鮮やかな色で見えるものは

多くないようである。

であるから

鮮やかな色というのは動物や昆虫にとっては全く意味がないものかもしれない。

 

蝶も美しい色彩を持っているが

その色彩の意味について大部分は意味が不明である。

毒を持つ蝶も多く

その場合は 先ほど述べたように警告色となっていると思われる。

 

さて昆虫の中には容姿をまねたものもいる。

バッタ、シャクトリムシナナフシ など、姿を自然に似せる者などである。

なんとシャクトリムシは、体表の成分まで植物に似せている。

他の昆虫の姿を真似るもの。
無毒な生物が有毒な生物に似せるのは「ベイツ型擬態」と呼ばれている。

アシナガ蜂に似せたカノコガ の一種などとても見事なものである。

 

固くて食べにくいものに似せる者。

甲虫目 ゾウムシ科 のカタゾウムシの仲間は

とにかくかたく、標本針が刺さらないくらいだ。

それに似せたカタゾウカミキリ、その似せ方は見事である。

 

少し違った似せ方としては

同じ科の別族のものが地域ごとで色を合わせているということもある。

 

スズメバチなどがそうで

日本では4~5種が同じ場所で見られるが、同じような縞模様をしている。

だがそれも、熱帯アジアに行くとまた違った縞模様になる。

 

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昆虫の恋。

昆虫はどう出会っているか。

それはフェロモンが関係している。

オスはメスの体から出るフェロモンを感じ取り、交尾行動に至る。

他に、大きな声で鳴く昆虫は

その音を、オスがメスを呼ぶ道具として使っている。

 

オスが自身の縄張りを誇示する場合にも声を使う。

その昆虫にとって音は言葉である。

蛍のように光で誘うもの、贈り物をするものなどもいる。
究極はカマキリのオスのように、自身が贈り物となる。

交尾中にメスに食べられてしまうのである。

 

昆虫は広い森の中で出会うために様々な手を尽くす。

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